「ウォッカ・マティーニを。ステアせずシェークで。」
この言葉をご存知でしょうか。
世界的に大ヒットしている『007』シリーズの主人公ジェームズ・ボンド扮するダニエル・クレイグが作中で発するセリフです。
お酒を口にするシーンの多い同シリーズですが、作中で多く登場するお酒がボンド・マティーニです。
この記事を見られている方は、
「ボンドマティーニってどういうお酒?」
「普通のマティーニとの違いは?」
「マティーニをシェークでってどういうこと?」
このような疑問をお持ちかと思います。いくら007シリーズが好きな方でもアルコール度の強いマティーニというカクテルについて色々な種類があったなんて知っている人は少ないですよね。
実は、私『ダニエル・クレイグ』演じる007シリーズが大好きなんです。小さいころから007は見てました。ショーンコネリーの時代から。かっこいいクルマや特殊な武器が目新しくいつも楽しみに見てたのを記憶しています。というかDVDをすべて持ってます!!
でも、ダニエル・クレイグが出てきてからは、さらにファンになりましたね。あの筋骨隆々な体と激しいアクションを見てスポーツジムでウエイトトレーニングに励んだのを覚えています。
はい、そんな私が酒屋としての視点からマティーニやボンド・マティーニについて詳しく解説していきましょう!
最後まで読んでいただくことでマティーニやボンド・マティーニについての知識を得て、さらにお酒に興味をもって楽しんでくださいね。
目次
本来のマティーニとは
ボンド・マティーニについてお伝えする前に、通常のマティーニ(ドライ・マティーニ)について解説していきましょう。
マティーニとは世界各国の著名人から愛されている歴史あるお酒で、別名『カクテルの王様』と呼ばれています。
名前の由来については諸説あり、どの説が本当なのか真偽ははっきりしていません。
通常マティーニは『ジン』と『ドライベルモット』というお酒をステアによって混ぜ合わせて作られます。
ジンとは穀物を蒸留して作られるグレーンスピリッツに香草や薬草を加えて作られるお酒で、3大スピリッツとして知られています。薬草、香草の種類や配合によって異なりますが、基本的にスッキリとした飲み口とほのかな苦味が特徴です。蒸留によって40度から50度のアルコール度数となり販売されています。
ドライベルモットとは白ワインをベースとして薬草や香草、スピリッツ、糖分を加えて作られるフレーバーワインを指します。アルコール度数は15度から20度とジンに比べると低いです。食前酒やカクテルベースとして親しまれているお酒です。有名なメーカーは左側がフランスのノイリープラット社、右側がイタリアのチンザノ社です。
マティーニはシンプルなレシピゆえにバーテンダーの腕が分かるお酒とされています。
007のジェームス・ボンドが愛飲するウオッカ・マティーニ
「ウォッカ・マティーニを。ステアせずシェークで。」
この有名なセリフは007シリーズ第3作目の『007ゴールド・フィンガー』で初めて登場しましたが、ウォッカ・マティーニ自体は1作目の『007ドクター・ノオ』から登場しています。
ウォッカ・マティーニが登場する007シリーズを映画の紹介とともにお届けします。
第1作目『007ドクター・ノオ』
ショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドが、南国にあるホテルのルームサービスでウォッカ・マティーニをオーダーしました。
これが007シリーズで登場するウォッカ・マティーニ最初の一杯です。
第5作目『007は二度死ぬ』
日本を舞台にしたシリーズ5作目で、捜査協力者のヘンダーソンからボンドにウォッカ・マティーニが渡されています。
それを飲んだボンドは「素晴らしいウォッカだ。」と評価しますが、のちに同じウォッカを飲むシーンでは「さっきのと同じウォッカだ。」と言ってまずそうな顔をしており、初めの高評価は忖度だったことが分かります。
第10作目『007私を愛したスパイ』
ソ連から派遣された女性スパイと任務を共にすることになったボンド。
ドレスアップした彼女とクラブでお酒を飲むシーンで「レディにはバカルディのオンザロックを。」とオーダーすると「殿方にはマティーニよ、ステアじゃなくシェークしてね。」と全て調査されていることを示唆するシーンが入ります。
第21作『007カジノロワイヤル』
ボンドが007になる前から始まる同作では、のちにボンドマティーニの代表格となるヴェスパーが登場しています。
本作のボンドガールから名付けられたヴェスパーは、ポーカーの最中に「ドライ・マティーニを。ゴードンジン3に対してウォッカ1、キナ・リレ2分の1、シェークしてレモンピールを入れてくれ。」というオーダーから生まれます。
ボンドが007シリーズ史上で最も愛していたと言われている本作のボンドガールは、のちに衝撃的な事実が発覚します。
第24作『007スペクター』
メキシコで事件を起こしてしまったボンドは全ての任務から外されてしまいました。
モロッコにいるボンドは砂漠へ向かうため、本作のボンドガールのマーガレットと列車に乗っています。
そこで2人がオーダーしたのはダーティ・ウォッカ・マティーニでした。ダーティとはオリーブの漬け汁を加えて、少し濁ったウォッカ・マティーニを指します。
ダニエル・クレイグがボンドを演じて4作目となった本作は、今までの物語が全て紡がれているような作品となっています。
ウオッカ・マティーニとボンド・マティーニの違い
たくさんの種類のマティーニが出てきたので、このあたりで整理してみましょう。
通常マティーニはジンとドライベルモットをステアしたカクテルを指します。
そのジンをウォッカに変えてドライベルモットとステアしたものをウォッカ・マティーニと呼びます。
ウォッカ・マティーニがステアして作るのに対し、ボンド・マティーニはウォッカとドライベルモットをシェークして作られます。
ボンド・マティーニは作中登場する度にレシピが微妙に変わっていますが、シェークしている点は一貫しています。
ヴェスパー・マティーニが誕生
前記した007シリーズ第21作『007カジノロワイヤル』にて登場した特別なボンド・マティーニは、作中で『ヴェスパー』と名付けられました。
テロ組織が資金を稼ごうとするのを防ぐため国家予算を使ってポーカーをプレイしていたボンドは、ウェイターを呼びドライマティーニをオーダーします。
しかし、ふと何かを思いついたように別のレシピを伝えます。
「ゴードンジン3に対してウオッカ1、キナ・リレを2分の1、よくシェークしてレモンピールを添えてくれ。」
通常ステアをしてジンとベルモット互いの良さを消さないようにするマティーニですが、よりアルコールの強いウォッカをプラスし、さらにシェークをしてワイルドな飲み口にするところにボンドの男らしさと潔さを感じます。
大勝負を制したボンドは、本作のボンドガール『ヴェスパー』と勝利のマティーニを味わっているシーンでこう語ります。
「そうだな・・・。ヴェスパーと名付けよう。」
「後味が苦いから?」
「いいや、一度味を知ると他のものは飲めない」
はい、もはやボンドでしかいえないセリフですよね。
このキナ・リレというヴェルモットは、フランスのボルドーのリレというメーカーから生産されていましたが現在生産中止になっています。同じタイプの商品としてセミヨン種のブドウから造った白ワインをベースにした「リレ・ブラン」を代用するといいでしょう。
バーでボンドマティーニを注文するときの注意点
007シリーズが好きな人であればボンド・マティーニを知っているかもしれませんが、通常はジンのマティーニが定番ですので、お酒に詳しいバーテンダーでもボンド・マティーニを知っているとは限りません。
実際に「ヴェスパーを。」とバーで注文する人が増えたようですが全てのバーテンダーがこのレシピを知っているわけもなく、要望のものが出てこなかったり通常のマティーニが出てきたということもあったようです。
ではお店で楽しみたい場合どのように注文すればよいのでしょうか。
ウオッカマティーニなら、バーテンダーさんは理解してくれると思います。
ボンド・マティーニの場合は、「ウオッカマティーニをお願いします。ステアではなくシェークしてお願いします。」と言えば大丈夫でしょう。
ヴェスパー・マティーニの場合は、ヴェスパーではほぼオーダーが通りません。どうしてもオーダーしたいなら丁寧に作り方をお願いしましょう。
「すみません。マティーニが欲しいのですが、作り方を細かくお願いしていいですか?」
バーテンダーさんが快諾してくれるならボンドのように「ゴードンジン3に対してウオッカ1、リレ・ブランを2分の1の量でお願いします。そしてよくシェークしてレモンピールを添えてください。」と分量やレシピをしっかり説明しましょう。
ただ、リレ・ブランがお店に在庫があるとは限りませんので、リレ・ブランがなければドライ・ヴェルモットに変更してもらいましょう。
マティーニの作り方とレシピ
ここでは定番のマティーニの他、ご紹介してきた007シリーズに登場するオリジナル・マティーニの作り方とレシピを説明します。
今から紹介する作り方にはステアとシェーク2つの混ぜ方があります。
ステア:マドラーを使い2〜3回そっと回して混ぜる。
シェーク:シェーカーを使ってしっかりと混ぜる。
元となるお酒があれば案外簡単にできますので、ご自宅でも試してみてください。
ちなみに他のジンのカクテルに興味ある方はこちらもご覧くださいね。
マティーニ
世界中で古くから親しまれており『カクテルの王様』と呼ばれています。
ジンとドライベルモットしか使わないシンプルなレシピですが、それゆえに配分や分量によって味に変化がつきやすく、バーテンダーの腕が試されるお酒とされています。
作り方 | 1.ミキシンググラスに氷を入れる 2.ジン45mlをグラスに注ぐ 3.ドライベルモット15mlをグラスに注ぐ 4.マドラーでステアしてそっと混ぜる 5.カクテルグラスに注ぐ |
説明 | アルコール度数が高く、ジンとドライベルモットのボタニカルな香りや風味がありますので玄人向けのカクテルです。 |
バーではミキシンググラスを使用しますが、ご家庭では大き目のグラスをミキシンググラスの代用にしても構いませんよ。
ミキシンググラスとは、カクテルを作る専用のグラスのことです。このグラスに氷とジン、ウオッカやリキュールなどをいれてマドラーで混ぜます。そうするとカクテル自体がキンキンに冷えます。そして画像のように蓋をしてカクテルグラスに注ぐと氷がミキシンググラスに残りカクテルが薄くなりません。
わたしはこのタイプのミキシンググラスとカクテルグラスは東洋佐々木さんの少し大きめのタイプを利用しています。昔は60mlのカクテルグラスが主流だったんですが、最近は大き目のグラスが人気です。ボンドも大き目のグラスで飲んでましたね。ご興味ある方はこちらをご覧ください。
ウオッカ・マティーニ
通常マティーニのレシピではジンを使用しますが、代わりにウォッカを使用して作るのがウォッカ・マティーニです。
ジンがウォッカに変わっただけで、作り方は通常のウォッカと変わりません。
作り方 | 1.ミキシンググラスに氷を入れる 2.ウォッカ45mlをグラスに注ぐ 3.ドライベルモット15mlをグラスに注ぐ 4.マドラーでステアしてそっと混ぜる 5.カクテルグラスに注ぐ |
説明 | 通常のマティーニ同様アルコール度数が高く、玄人向けのカクテルです。 しかしジンとは違いウォッカには薬草や香草による香りづけをしていないため、通常のマティーニに比べると、すっきりとのみやすくなっています。 |
ボンドマティーニ
007シリーズで度々登場するボンド・マティーニは、お酒がストーリーに関わる重要な役割を持つ同シリーズにおいて象徴ともいうべきカクテルで、伏線やシーンの印象作りなど、要所で使用されています。
「ウォッカ・マティーニを。ステアせずシェークで。」このセリフの通りステアではなく、シェークをして混ぜるのが特徴です。
作り方 | 1.シェーカーに氷を入れる 2.ウォッカ45mlをグラスに注ぐ 3.ドライベルモット15mlをグラスに注ぐ 4.シェーカーを使ってしっかりと混ぜる 5.カクテルグラスに注ぐ |
説明 | ステアではなくシェークすることで、ウォッカとベルモットがしっかりと混ざり、滑らかで飲みやすい口当たりとなります。 作品によって指定される配分や分量が違うため、明確なレシピは存在しません。 |
ヴェスパー・マティーニ
紳士的かつ大胆なボンドのイメージを増幅させているボンド・マティーニですが、特別なレシピによって作られ世界中で大人気となったボンド・マティーニが『ヴェスパー・マティーニ』です。
シリーズ第21作『007カジノロワイヤル』でダニエル・クレイグ演じるボンドによって、本作のボンドガール『ヴェスパー』にちなんで名付けられました。
映画のヒットとともに人気を博したボンド・マティーニです。
作り方 | 1.ゴールドジン90mlをシェイカーに注ぐ 2.ウォッカ30mlをシェイカーに注ぐ 3.リレ・ブラン10mlをシェイカーに注ぐ 4.シェークしてしっかりと混ぜる 5.カクテルグラスに注ぎレモンピールを入れる |
説明 | ジンとウォッカの強い味わいとリレ・ブランの甘み、レモンピールの苦味と香りがシェークをすることでしっかりとまとまります。 アルコール度数は高く玄人向けのカクテルです。 |
おすすめのウオッカとジンはこちらのページをご覧ください。
カジノロワイヤルでボンドが飲むお酒
ここまでは007シリーズの象徴ともいえるボンド・マティーニについてご紹介してきましたが、同シリーズにはボンド・マティーニ以外にも様々なお酒を楽しむボンドが描かれています。
下の2つのお酒は特に人気のある銘柄で、様々な種類の酒や銘柄を好むボンドの性格も表されています。
マウントゲイ
マウントゲイは西インド諸島バルバドス産のラムで、バルバドス島で栽培されている良質なサトウキビから抽出される糖蜜と、珊瑚の地層により自然濾過された地下水を原料としています。
ちなみにラムとはサトウキビを原料に造られるスピリッツのことで、モヒートやキューバリブレなどの人気カクテルのベースとしても知られるお酒です。
カラメルのような甘味が特徴で、洋菓子の味付けにも使用されており、アルコール度数は40度から50度と高く、中には75度を超える銘柄も存在します。
作中では敵を追ってバハマのクラブへ向かっている道中にカウンターで「マウントゲイのソーダ割り」をオーダーしています。
危険な場面でも落ち着いてお酒を嗜むボンドが描かれているシーンです。
ボランジェ
007で度々登場するジェイムス・ボンドが愛飲するシャンパーニュといえば『ボランジェ』です。ヒロインや女性と接近する際に多く登場しており、ボンドのここぞという気迫が見てとれます。
敵の妻を誘惑するシーンでボンドはこのようなオーダーをします。
「冷えたボランジェのグランダネを。」
グランダネとは質の高いブドウが収穫できた年だけ造られる特別なお酒で、女性を魅了する術を知り尽くしたボンドだからこそ成せる技です。
ボランジェは最高級のフランスメゾンで、1884年には英国王室御用達を拝命しています。ふくよかで力強い仕上がりとなるピノ・ノワールを原料としており、こだわりの樽発酵・樽熟成で奥行きのある味わいを引き出しています。
ジンやウオッカのご興味ある方は、是非こちらの下記のページもご覧ください。