名倉山酒造は、大正7年(1918年)に初代松本善六によって創業されました。善六は当時の酒の鑑定官のような仕事をしており、その経験を活かして酒造りに取り組みました。創業当初は「竹正宗」という銘柄で販売されていましたが、昭和12年(1937年)頃に猪苗代湖畔の名倉山の美しさから現在の銘柄「名倉山」へと変更されました。以来、名倉山酒造は酒質に徹底的にこだわり、革新的な酒造りに取り組んできました。

名倉山酒造は、会津若松の城下町に位置し、創業以来、その地で酒造りを続けています。会津若松は福島県の吟醸造りの先進地として知られ、名倉山酒造はその中でも「きれいな甘さ」を追求しています。米、水、製造にこだわり抜いた酒造りは、多くの受賞歴で裏付けられています。全国新酒鑑評会での9年連続金賞受賞、東北鑑評会での17年連続金賞受賞、南部杜氏自醸清酒鑑評会での上位入賞など、高い評価を受けています。

昭和48年(1973年)、全国的には甘口の酒が主流だった時代に、名倉山酒造は「吟醸造りで一般の消費者に飲んでもらえる純米酒を造りたい」と考え、吟醸・純米酒造りに着手しました。この取り組みは、先代たちが守り受け継いできた伝統的な酒造りの基本を大切にしつつ、時代が求める新しい味わいを追求する姿勢の表れでもあります。

名倉山酒造の酒造りは、精米から始まります。大吟醸酒には山田錦を35%~45%、純米吟醸酒や純米酒には夢の香や山田錦を50%~55%、本醸造や普通酒には酒造好適米を65%の精米歩合で使用しています。精米後、米は地下水に浸され、限定吸水を行うことで、米に適度な水分を吸収させます。この工程は、最終的な酒の味を左右する重要なステップです。

麹造りは、名倉山独自の温床線を持つ麹室(こうじむろ)で行われます。温度と湿度を一定に保つことで、質の高い麹を作り上げます。酒母、麹、蒸し米、水を加えて醪(もろみ)を仕込む段仕込みも、雑菌の侵入を防ぎ、発酵を促進するための日本酒独特の技法です。醪の発酵は、杜氏の経験と五感を駆使して細心の管理が行われ、名倉山ならではの旨味を引き出します。

名倉山酒造では、パストライザー製法を採用しています。従来の方法では、65℃に加熱した酒を瓶に詰めていましたが、この方法では香りや風味が損なわれてしまうことがありました。パストライザー製法では、低温で充填したお酒をベルトコンベヤーで移動させながらシャワーを浴びせ、徐々に温度を上げていき、65℃に達するまでシャワーで熱殺菌を行います。これにより、香りや風味を損なうことなく、酒質の劣化を防ぐことができます。

このように、名倉山酒造は伝統的な技法を守りながらも、新しい技術や方法を積極的に取り入れ、常に最高の品質を追求しています。日本酒「名倉山」は、国内外で高い評価を受けており、その品質の高さと独自の味わいが多くの人々に愛されています。

近年の受賞歴

2023年
    
IWC(インターナショナルワインチャレンジ)純米大吟醸部門 「名倉山 純米大吟醸 鑑評会出品酒」 SILVER賞を受賞。
SAKE COMPETITION 純米吟醸部門「会津士魂 純米吟醸 福乃香」 SILVER賞を受賞。
2022年
    
IWC(インターナショナルワインチャレンジ)純米吟醸部門 「会津士魂 純米吟醸 備前雄町」 SILVER賞を受賞。
全米日本酒歓評会 純米部門「会津士魂 特別純米」 準グランプリを受賞。
2021年
    
全国新酒鑑評会にて金賞を受賞。
IWC(インターナショナルワインチャレンジ)純米酒部門 「純米酒 月弓」 SILVER賞を受賞。
全米日本酒歓評会 純米部門 「純米酒 月弓」 銀賞を受賞。

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