地理的表示

 

GI」とも呼ばれる、お酒の地理的表示をご存知でしょうか。この制度は、お酒の産地や品質を保証するもので、日本では平成7年から導入されています。この制度は海外では一般的ですが、日本ではいまだ、浸透途上にあります。

 

この記事では、そんなお酒の地理的表示を簡単に、わかりやすく解説していきます。

 

その土地で育まれたお酒は貴重なもの。是非、地理的表示の制度が普及して、地元特有のお酒が後世に残っていってほしいものです。

地理的表示とは

あのフランスで有名な「シャンパーニュ」は、みなさんご存知ですよね。実は、シャンパーニュとはフランスの地方名のことでして、産地名=商品名として世界に浸透されています。お酒の種類でいえばワインの中のスパークリングワインに属します。

 

もちろん、シャンパーニュ地方で生産されたワインすべてをシャンパーニュと呼ぶことはできません。一定の基準や品質を満たしたものだけのブランドになります。

 

このように、一定の基準を満たした品質と正しい産地であることを酒類の地理的表示(GI)と示されるよう平成6年より日本も海外のように立ち上がったのです。いわゆる地域ブランド産品のことになります。

 

この制度は、お酒の生産者と消費者共にメリットがあるものです。生産者向けのメリットとしては、地域や品質を保証してくれるものであること。そして消費者にとっては、国のお墨付きがつくことで原産地偽証などの粗悪品を掴みにくくなる、ということです。

 

買う段階で一定の安心感がある。これは、消費者にとって大事なことですよね。

 

豆知識
酒類の地理的表示以外には、2014年農林水産物等の地理的表示も保護を目的として発足しました。あおもりカシス、但馬牛、神戸ビールや、夕張メロン、八女伝統本玉露、江戸崎かぼちゃ、鹿児島の壺造り黒酢の7件が始めて登録されます。2021年3月現在では、106種類の登録がされています。

 

地理的表示がなぜできた?

ワインが好きな人であれば、良く飲む銘柄、というものが存在するでしょう。例えば「ボルドーワインが好き」・「ブルゴーニュワインが好き」といった具合です。ボルドーやブルゴーニュというのはフランスの地名そのもの。地名がワインを表しているのです。

 

これは勿論、フランスに限った話ではありません。イタリアやドイツなどにも、同じ例が沢山あります。

 

フランスやイタリアというヨーロッパの国々では、昔からワイン作りが主要産業の一つでした。自国内での消費もさることながら、国同士の商取引にも用いられてきたのです。そうなると、質の良いワインを作り、それを保証する制度が必要になってきます。そこでできたのが、「原産地呼称制度」です。

 

この制度では、産地名で呼ばれるワインに必要な一定の基準を定めています。この制度により、ワインの生産者はブランドを保持し、消費者は良い品質のものを選べるようになりました。

 

どちらにとっても良い取引ができる。これが原産地呼称制度の目的であり、地理的表示の元となった考え方です。

 

やがてWHOが発足すると、加盟国全てに対し、ワインや蒸留酒を地理的表示保護制度によって保証し、保護することが義務付けられました。日本も加盟国の一つですので、例外ではありません。

 

日本で地理的表示が正式に導入されたのは、平成6年のこと。このときに制定されたガイドラインにより、日本酒・焼酎・泡盛の3種類に地理的表示基準が定められました。

 

しかし、日本はお酒の宝庫です。これ以外にも、特色豊かで地域性に溢れたお酒が存在しています。これらを保護するため、平成27年にはガイドラインが変更されました。この変更により、日本のお酒全てに地理的表示の基準が定められることになったのです。

 

地理的表示の表示方法

地理的表示は、ただ闇雲に地名を付ければ良いという訳ではありません。しっかりとした方法が定められています。地理的表示制度の基準を満たしたお酒は、商品名と共に以下の文言を表記しておかなくてはなりません。

 

それが、

  1. 地理的表示
  2. Geographical Indication
  3. GI

の3つです。

具体的には、「GI東京 ××酒」などのように、お酒の商品名と共にラベルに表示するのです。酒屋さんなどで、一度見てみるのも面白いでしょう。

 

【日本酒の表示例】

地理的表示

出典:国税庁2021年3月版 お酒の地理的表示(GI)を知っていますか?

 

地理的表示の指定者と、その条件

地理的表示は、そのお酒を造っている生産者団体から申請を受けた後、国税庁長官によって指定されます。

 

地理的表示が認められるか否かには、いくつかの条件があります。それが、以下の4つ。

  • 産地特有の特徴が、お酒に現れているか
  • お酒の原料や作り方の品質が保たれているか
  • お酒の特徴を守るため、しっかりと管理されているか
  • お酒の品目は正しいものか

これらの条件を満たしていると国税庁に認識されれば、晴れて地理的表示を付けることができるのです。

 

国税庁長官は、地理的表示を指定するだけではありません。そのお酒が条件を満たしていない、もしくは、品質管理を怠ったといったことなどがあれば、地理的表示の指定を取り消すこともあるのです。

 

地理的表示は、品質管理を怠らない生産者とその商品を、国がブランド化し、保護してくれる制度です。そのため、その信頼を損なうような行動は避けなくてはなりません。

 

地理的表示のメリット・デメリット

地理的表示保護制度は、しっかりと品質管理をすることを前提とすれば、生産者側にとってメリットの大きい制度になっています。では、私達お酒を飲む側、消費者にとってはどんなメリットがあるのでしょうか。また、デメリットについても説明していきます。

 

まずはメリットから。地理的表示保護制度が消費者にもたらすメリットは、主に安心感に由来しています。

  • 地理的表示があることで、特産品であると認識しやすい
  • 原材料などを偽装しにくくなり、商品を信頼することができる
  • 国が「地理的表示」の明確な基準を示しているため、その基準に則った、安心な商品を買うことができる

これらが、地理的表示保護制度に考えられる主なメリットです。

 

地理的表示とは、どこの地域の特産品であるかを表すもの。お土産で考えると分かりやすいのですが、「その地域のお土産」をうたっていたとしても、原材料や製造がその地域とは限りません。しかしその点、地理的表示がなされていれば、その地域で全て作られたものだと考えることができるのです。

 

その上、地理的表示の導入には明確な基準が設けられています。そのため、原材料や製造元だけでなく、品質的な面でも強い安心感を得ることができるでしょう。

 

では、次にデメリットを見ていきましょう。デメリットは主に、地理的表示が浸透していく中で起こる物事に由来しています。

  • ブランド性の高さから、商品を手に入れたくても手に入れられない人が増える
  • 巧妙に偽装されると、模造品と正規品を見分けられない可能性がある
  • 贈答品としての受容が高まり、値段が吊り上がってしまう可能性がある

地理的表示には、ブランド性を高める効果があります。これ自体は喜ぶべきことなのですが、気軽に手に入れ難くなることが考えられます。また、ブランド性が高くなれば、値段そのものが大きく上がってしまうこともあるでしょう。これは、大きなデメリットと言えそうです。

 

そして、ブランド性が高まれば高まる程、贈答品としての価値も上がります。そうなってしまうと、地理的表示そのものが「贈答品の基準」として浸透してしまう場合も考えられるのです。

現在の地理的表示の指定状況

先に書いた通り、地理的表示保護制度は平成7年に始まりました。この制度が導入された当時、適用されていたのは蒸留酒である焼酎の3種類だけでした。具体的に言えば、壱岐(長崎)・球磨(熊本)・琉球(沖縄)です。沖縄に関しては、言わずと知れた「泡盛」ですね。

 

これらの3つが適用された後、日本では徐々に地理的表示が浸透していきました。ワインに始まり、日本酒、そして梅酒。こうした働きは今も続き、現在は適用されているお酒は16種類にまで増えているのです。

 

つい最近の話になりますが、令和2年に和歌山県特産の梅酒が地理的表示の適用を受けました。これは、地域性溢れるお酒が豊富な日本にとって、非常に嬉しいことと言えるでしょう。

 

以下に、制度の適用を受けた地域とお酒の種類を書いていきます。もしその地域に行くことがあれば、是非手に取ってみてくださいね。

名称 指定した日 酒類区分 生産基準
壱岐 平成7年6月30日 蒸留酒 詳細
球磨 平成7年6月30日 蒸留酒 詳細
琉球 平成7年6月30日 蒸留酒 詳細
薩摩 平成17年12月22日 蒸留酒 詳細
白山 平成17年12月22日 清酒 詳細
山梨 平成25年7月16日 ぶどう酒 詳細
日本酒 平成27年12月25日 清酒 詳細
山形 平成28年12月16日 清酒 詳細
北海道 平成30年6月28日 ぶどう酒 詳細
灘五郷 平成30年6月28日 清酒 詳細
はりま 令和2年3月16日 清酒 詳細
三重 令和2年6月19日 清酒 詳細
和歌山梅酒 令和2年9月7日 その他の酒類 詳細
利根沼田 令和3年1月22日 清酒 詳細
令和3年3月30日 清酒 詳細
山梨
令和3年4月28日 清酒 詳細

出典参照:国税庁の地理的表示の生産基準より

 

最近では、群馬県の利根沼田、山口県の萩、山梨県の山梨の清酒が登録されました。この様に、多くの地域が適用を受けていることが分かります。生産者・消費者共に利になる制度なのですから、これらか先も広まっていってほしいものです。

 

令和3年の1月時点での地図上で分布した指定状況を下記のイラストで説明します。

地理的表示

出典:国税庁2021年3月版:お酒の地理的表示(GI)を知っていますか

地理的表示の一覧

せっかく多数のお酒に恵まれた日本に生まれたのですから、それぞれをじっくり楽しみたいものです。

 

ここでは地理的表示の適用を受けた地域・お酒それぞれの特徴を見ていきましょう。味わいなどにも触れていきますので、選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。

 

北海道

名称 北海道
産地の範囲 北海道
酒類区分 ぶどう酒
特徴
  • 白ワインは、青リンゴや柑橘系の果実の香りと豊かな酸味を有し、フルーティで軽快な味わいです。
  • 赤ワインは、スパイスや果実の香りを有しているもの、軽快な熟成香を有しているものがあり、はっきりとした酸味と穏やかな渋みを有しています。
  • ロゼワインは、豊かな果実の香りを有し、辛口のものではその酸味が鮮明に感じられ、フルーティで爽やかです。
風土
  • 北海道のぶどう栽培地では、4月から10月の日照時間が長く、1日の気温の変化が大きいです。
  • ぶどう生育期は総じて冷涼な気候であり、降水
    量も少ないことから、糖度が高く有機酸を豊富に含有するぶどうが健全な状態で収穫できます。
原料
  • 北海道で収穫されたぶどうのみを使用していること。
  • ぶどう品種はケルナー、ナイヤガラ、山幸、ピノ・ノワールなど、指定品種(57品種)に限られていること。
製法
  • 一定の糖度以上のぶどうのみを使用していること。
  • 北海道内で製造、貯蔵及び容器詰めが行われていること。 アルコール度数は14.5%以下であること。 補糖、補酸等には一定の制限があること。
管理期間

地理的表示「北海道」使用管理委員会

<住  所>北海道小樽市色内1丁目1番12号
      小樽運河ターミナル
      NPO法人ワインクラスター北海道内
<電話番号>0134-64-5581
<ウェブサイト> winecluster.org

地理的表示北海道

 

山形

名称 山形
産地の範囲 山形県
酒類区分 清酒
特徴
  • 全般的にやわらかく透明感のある酒質を有しています。純米酒・本醸造酒は酸味や旨味が調和した、ふくよかでやわらかな味わいが特徴。
風土
  • 冬場には多くの雪が積もる山形県。これが連峰・山系特有の優良な地下水に。水質は酒造りに適した軟水です。
  • 県内では、山形県工業技術センターと山形県酒造組合が中心となって、人材育成と醸造技術の向上に取り組み品質の向上に日夜挑戦されています。
原料
  • 米及び米こうじは国内産米であること。
  • 山形県内で採水した水のみを使用していること。
  • 原料に糖類等を使用していないこと。
製法
  • 山形県内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
管理期間

山形県酒造協同組合

<住  所>山形県山形市緑町1丁目7番46号
<電話番号> 023-641-4050
<ウェブサイト> www.yamagata-sake.or.jp/

地理的山形

 

利根沼田

名称 利根沼田
産地の範囲 群馬県沼田市、利根郡片品村、川場村、昭和村及びみなかみ町
酒類区分 清酒
特徴
  • 透明感のある味わいの中に、適度な旨味を感じることのできる酒質
  • 余韻には雑味の無い旨味や甘みの他、ほのかな苦味が感じられ、その苦味が利根沼田で収穫される山菜や青野菜を連想させます。
風土
  • 利根沼田は、群馬県の北部に位置し、夏は日照時間が長く、冬は寒さが厳しい地域です。武尊山などの近隣の山々を通じた豊富な軟水は、透明感のある酒質の要因となっています。
  • 古くから酒蔵同士の緊密な交流があったとされ、全ての酒蔵が蔵元杜氏や社員杜氏となった現在においては、酒造りのノウハウの研究・蓄積を通じて、この地域特有の酒質の維持・向上に努めています。
原料
  • 米及び米こうじには、利根沼田の範囲内において収穫された次の商標又は品種の米のみを用いること。
      ・雪ほたか  ・五百万石  ・コシヒカリ
  • 発酵に用いる酵母には、次のもののみを用いること。
      ・群馬KAZE酵母  ・群馬G2酵母  
      ・蔵付き酵母(利根沼田の範囲内で採取し、培養したものに限る。)
  • 原料にアルコール及び糖類等を使用していないこと。
製法
  •  利根沼田の範囲内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
管理期間

GI 利根沼田協議会

<住  所>群馬県沼田市白沢町高平 1306-2

<電話番号>0278-53-2334 (大利根酒造有限会社 内) 

地理的利根

 

山梨

名称 山梨
産地の範囲 山梨県
酒類区分 ぶどう酒
特徴
  • 甲州を原料とした白ワインは、香り豊かで口中で穏やかな味わいを感じることができ、フルーティーな柑橘系の香りと、はつらつとした酸味を有しています。
  • マスカット・ベーリーAを原料とした赤ワインは、鮮やかな赤紫色の色調を有し、甘さを連想させる華やかな香りと穏やかな渋味を有しています。
風土
  • 山梨県の気候・風土はぶどう栽培に適しており、ぶどうの着色は良く、秋の冷風が糖度をはじめとする品質全体に良い影響を与えています。
原料
  •  山梨県で収穫されたぶどうのみを使用していること。
  •  ぶどう品種は甲州、マスカット・ベーリーA、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネなど、指定品種(42品種)に限られていること。
  • 一定の糖度以上のぶどうのみを使用していること。
製法
  • 山梨県内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
  • アルコール度数は辛口が8.5%以上、甘口が4.5%以上であること。
  • 補糖、補酸等には一定の制限があること。
管理期間

地理的表示「山梨」管理委員会

<住  所>山梨県甲府市東光寺3-13-25
      地場産業センター2階
      山梨県ワイン酒造組合内
<電話番号>>055-233-7306

<ウェブサイト> www.wine.or.jp/

 

 

白山

名称 白山
産地の範囲 石川県白山市
酒類区分 清酒
特徴
  • 全体的に、米の旨みを活かした豊かなこくを有しています。
  • 純米吟醸酒・吟醸酒は、穏やかな果実様の香りとほどよい酸味を有し、豊かな味わいとこくが相まって、飲み手に品格を感じさせます。
風土
  • 石川県白山市では、1300年以上も前から信仰の対象となっている霊峰白山を水源とする手取川扇状地にあり、豊かな伏流水に恵まれています。
  • この水はカルシウムを多く含み、カリウムが少ないことから、酒造りの過程において穏やかな発酵をさせる一方で米の溶解が促されることにより、米の旨みが引き出され、豊かなこくのある白山特有の酒質が形成されてきました。
原料
  • 米及び米こうじは国内産米(醸造用玄米1等以上に格付けされたもので、精米歩合70%以下のもの)であること。
  •  石川県白山市内で採水した水のみを使用していること。
  •  原料に糖類等を使用していないこと
製法
  • 石川県白山市内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
  • 液化仕込みを行わないこと。
  • 酒母を用いた製造であること。
  • こうじ米の使用割合は、20%以上であること。
管理期間

GI白山清酒管理機構

<住  所>石川県白山市東新町12番地
      白山酒造組合内
<電話番号>076-276-4888

<ウェブサイト> https://www.sake-hakusan.info/

地理的白山

 

三重

名称 三重
産地の範囲 三重県
酒類区分 清酒
特徴
  • 芳醇な酒質を有しています。口に含むと旨味を感じさせる滑らかな舌触りにより芳醇さを感じさせる反面、甘味や辛味はいずれも穏やかであるため、温度によらない暖かみが口の中に広がります。
風土
  • 夏季の黒潮の影響による温暖な気候と、冬季の「鈴鹿おろし」等の乾いた寒冷な季節風による冷涼な気候が特徴。また鈴鹿山脈等の 1,000mを超える山々に降り積もった雪や多雨地帯である紀伊山地の雨水による優良な水資が豊富です。
  • 近年では、三重県工業研究所とも協力し、独自の清酒酵母の開発に取り組んでいるほか、三重の気候風土に適合した醸造技術の開発や、若手技術者による「三重県清酒研究会」での最新の醸造技術の修習などにより、酒造技術者等の資質向上にも努めています。
原料
  • 米及び米こうじは国内産米(農産物検査法により3等級以上に格付けされたもの)のみを用いたものであること。
  • 三重県内で採水した水のみを使用していること。
製法
  • 香味及び色沢が良好な「特定名称酒」であること。
  • 三重県内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること
管理期間

三重県酒造協同組合

<住  所>三重県津市大谷141番地の4
     
<電話番号>059-226-2297

<ウェブサイト> www.mie-sake.or.jp/

地理的三重

 

 

灘五郷

名称 灘五郷
産地の範囲 兵庫県神戸市灘区、東灘区、芦屋市及び西宮市
酒類区分 清酒
特徴
  • 味わいの要素の調和がとれており、後味の切れの良さを有しています。その中でも貯蔵したものは、秋上がりして香味が整いまろやかさを増して飲み飽きしない酒質となります。
  • 秋上がりした酒の中でも、貯蔵容器から外気温と同温度程度に冷めた清酒を加熱処理することなくそのまま出荷するものを「冷卸(ひやおろし)」といい、灘五郷では伝統的に9月以降に出荷されています。
風土
  • この地域の地層を通って湧き出る地下水は、酵母の増殖に必要なミネラル分を適度に含み、酒造りに適した硬水をもたらしています。この地下水を仕込み水として醸造することにより、強く健全な発酵を促し、味わいの要素の調和がとれ、後味の切れの良い酒質が形成されてきました。
  • 日本三大杜氏の一つに挙げられる丹波杜氏の伝統的な酒造技術と技術者・研究者の民間組織である「灘酒研究会」の人材育成と酒造技術向上の取組、灘五郷酒造組合と自治体が協力して行った域内の地下水の調査研究と品質維持、これら官民・地域一体となった取組などを行ってきた結果、灘五郷らしい清酒の特性が時を越えて現代まで脈々と受け継がれています。
原料
  • 米及び米こうじは国内産米(農産物検査法により3等級以上に格付けされたもの)のみを用いたものであること。
  • 灘五郷内で採水した水のみを使用していること。
  • 原料に糖類等を使用していないこと。
製法
  •  灘五郷内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること 。
管理期間

灘五郷酒造協同組合

<住  所>兵庫県神戸市東灘区御影本町5丁目 10 番 11 号
      
<電話番号> 078-841-1101

<ウェブサイト> www.nadagogo.ne.jp/

地理的灘五郷

 

はりま

名称 はりま
産地の範囲 兵庫県姫路市、相生市、加古川市、赤穂市、西脇市、三木市、高砂市、小野市、加西市、
宍粟市、加東市、たつの市、明石市、多可町、稲美町、播磨町、市川町、福崎町、神河町、
太子町、上郡町及び佐用町
酒類区分 清酒
特徴
  • 口当たりは柔らかく優しい丸みがあり、苦み渋みが少ない繊細なコクと豊かな香味のふくらみを有し、兵庫県産山田錦を麹に用いることにより、心地良い酸味が付与され、後味が軽快な酒質になります。
  • 特に、純米吟醸酒、吟醸酒は華やかなリンゴの様な果実様の甘い香りが心地良い酸味と調和することにより、更にのど越しが良い酒質となります。
風土
  • ミネラル分が多い粘土質の農地が広がり、米が登熟する時期には一日の気温差が大きくなります。これらの気候風土が、山田錦に心白の形状、脂肪やたんぱく質の少なさなど、清酒原料として良い影響を与えています。
  • 昭和11年に誕生した山田錦は、現在に至るまで原種が管理され、主要農作物種子生産条例(兵庫県条例第31号)により厳格に米の品質を守ることにより、兵庫県に山
    田錦を根付かせてきました。
原料
  • 米及び米こうじは、兵庫県で収穫した山田錦(主要農作物種子生産条例(兵庫県条例第31号)に基づく審査済みである種子から栽培して収穫したもの)のみを用いたものであること。
  • はりま内で採水した水のみを使用していること。
  • 原料に糖類等を使用していないこと。
製法
  • はりま内で醸造、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
管理期間

はりま酒研究会

<住  所>兵庫県姫路市北条永良町 246
      (姫路酒造組合内)
  
<電話番号>079-222-1472

地理的はりま

 

和歌山梅酒

名称 和歌山梅酒
産地の範囲 和歌山県
酒類区分 その他の酒類
特徴
  • 和歌山県内で収穫された新鮮な青梅又は完熟梅の豊かで厚みのある香りが、酒類中のアルコールの刺激的な香りを包み込むことにより、口に含む瞬間に爽やかな風味となって広がっていきます。
  • 適度な糖類の甘味と梅の酸味によるやや長めの心地よい余韻により口腔や鼻腔が整えられ、次に口に運ばれる食事の味わいを引き立てることができ、食前酒としても最適です。
風土
  • 和歌山県は山地が多く、古くから果樹栽培が盛んに行われてきました。中でも、梅は傾斜地でも効率的に育ち、和歌山県の温暖かつ年間降水量の多い気候により、大きく、高品質な梅の栽培が可能であったことから、和歌山県田辺市、日高郡みなべ町を中心にその栽培が広がっていきました。
原料
  • 酒類に浸漬する梅の実には、和歌山県内で収穫された新鮮な青梅又は完熟梅のみを用いたものであること。
  • 梅の実を浸漬する酒類は、酒税法第3条に規定する清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール又はスピリッツを用いたものであること。
  • 酒類及び梅の実以外の原料は、梅の果肉、梅の果汁、糖類、含糖質物(合成甘味料を除く。)及び炭酸のみであること。
製法
  • 梅の実は浸漬する酒類1KL当たり300KG以上使用すること。
  • 梅の実の酒類への浸漬は和歌山県内で行うこと。
  • 梅の実の酒類への浸漬期間は少なくとも90日以上とすること。
  • 梅の実を浸漬している酒類中で意図的に破砕や圧搾をしないこと。
  • 浸漬している酒類から取り出した梅の実を再度仕込みに用いないこと。
  • 酒造工程上、貯蔵する場合は和歌山県内で行うこと。
管理期間

GI 和歌山梅酒管理委員会

<住  所>和歌山県和歌山市雑賀屋町 16
      
<電話番号>073-431-8689

<ウェブサイト> https://giwakayama.com

地理的和歌山

 

壱岐

名称 壱岐
産地の範囲 長崎県壱岐市
酒類区分 蒸留酒
特徴
  • 単式蒸留焼酎である「壱岐」は、麦由来のさわやかな香りと米こうじの甘く厚みのある味わいを有しています。また、原料の水に由来するキレの良い飲み口を有
    しています。
風土
  • 長崎県壱岐市は、九州北方の玄界灘にある壱岐島を中心とした群島にあり、玄武岩層によって長い年月をかけて磨かれた地下水が豊かな地域です。壱岐の地下水により発酵が順調に促され、「壱岐」に厚みのある味わいを与えるほか、割水に用いる
    ことによりキレの良い飲み口を引き立たせています。
  • 歴史の記録の上で、麦を原料とした焼酎は、長崎県壱岐市のものが最も古く、日本における「麦焼酎発祥の地」とされています。「壱岐」は伝統的に米こうじと大麦から製造され、その原料は1:2の比率で用いられており、この伝統的な製法が「壱岐」の特性を確立させている1つの要因となっています。
原料
  • 穀類は大麦のみを用いたものであること。
  • こうじは米から製造された米こうじのみを用いたものであること。
  • もろみに用いるこうじと穀類の重量比が概ね1:2となっていること。
  • 長崎県壱岐市内で採水した水のみを用いたものであること。
製法
  • 長崎県壱岐市内で原料の発酵、蒸留、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
  • 米こうじ及び水を原料として発酵させた一次もろみに、蒸した穀類及び水を加えて更に発酵させた二次もろみを、単式蒸留機をもって蒸留したもの。
管理期間

壱岐焼酎管理委員会

<住  所>長崎県壱岐市郷ノ浦町東触639番地3
      壱岐酒造協同組合内
      
<電話番号>0920-47-0423

地理的壱岐

 

 

球磨

名称 球磨
産地の範囲 熊本県球磨郡及び人吉市
酒類区分 蒸留酒
特徴
  • 米由来のまろやかな甘さを感じる味わいと清涼感のある香味を有しています。
  • 常圧蒸留したものは香ばしさを伴った米特有の香りを有しています。
  • 減圧蒸留したものは、果実様の香りを有しています。
風土
  • 熊本県球磨郡及び同県人吉市は、九州中央部の九州山地に囲まれた球磨盆地にあります。日本本列島では低い緯度でありながら冬季の平均気温が低く、寒暖の差が大きい。濃霧の日も多く、この環境により、比較的低温での発酵及び適度な環境による貯蔵が可能となります。
  • 球磨盆地を流れる球磨川水系の水は、焼酎製造に適した軟水であり、「球磨」は、この地域の水を使用することにより、米由来のまろやかな甘さを引き立たせています。
原料
  • 米は国内産米のみを使用していること。
  • こうじは国内産米から製造された米こうじのみを使用していること。
  • 熊本県球磨郡又は同県人吉市内で採水した水のみを使用していること。
製法
  • 熊本県球磨郡又は同県人吉市内で発酵、蒸留、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
  • 米、米こうじ及び水又は米こうじ及び水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機をもって蒸留したものであること。ただし、米こうじ及び水を原料としたもろみについては、その一次もろみに米こうじ及び水を加えて更に発酵させたものに限る。
管理期間

球磨焼酎管理委員会

<住  所>熊本県人吉市麓町5番地1
         球磨焼酎酒造組合内
<電話番号>0966-22-5059

地理的球磨

 

薩摩

名称 薩摩
産地の範囲 鹿児島県(奄美市及び大島郡を除く)
酒類区分 蒸留酒
特徴
  • 単式蒸留焼酎「薩摩」は、原料のさつまいもの産地と焼酎の製造地が同じ鹿児島県のため、良質で新鮮なさつまいもを使用することができます。
  • 薩摩は、華やかで芳醇な香りを有し、その香りと調和した甘く濃厚な味わいが特徴である。また、蒸留直後からなめらかな口当たりを有しています。
風土
  • シラス台地が広く分布している鹿児島県は、水はけがよく地下水位が低い地域が多く、さつまいもの栽培に適していることから、江戸時代以降、さつまいもが広く栽
    培されており、日本最大の生産地である。このため、安定して原料のさつまいもが確保できる鹿児島県は、さつまいも焼酎の産地として適した地域です。
  • 薩摩の製造技術は、鹿児島県工業技術センターが中心となり技術開発・普及に当たっているほか、鹿児島大学の焼酎・発酵学教育研究センターにおいてもさつまいも焼酎の研究開発や人材育成を行っています。
原料
  • さつまいもは鹿児島県※で収穫したもののみを使用していること。
  • こうじは米こうじ又は鹿児島県※で収穫したさつまいもから製造されたさつまいもこうじのみを使用していること。
  • 鹿児島県※内で採水した水のみを使用していること。(※奄美市及び大島郡を除く)
製法
  • 鹿児島県※内で発酵、蒸留、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
  • こうじ、さつまいも及び水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機をもって蒸留したものであること。(※奄美市及び大島郡を除く)
管理期間

薩摩焼酎管理委員会

<住  所>鹿児島市錦江町8番15号
         鹿児島県酒造組合内
<電話番号>099-222-1455

地理的薩摩

 

琉球

名称 琉球
産地の範囲 沖縄県
酒類区分 蒸留酒
特徴
  • 琉球は、黒こうじ菌を用いた米こうじ及び水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機により蒸留した蒸留酒であり、原料の米こうじに由来する適度な油分による芳醇な味わいを感じることができます。
  • 特に、常圧蒸留したものの古酒(3年以上貯蔵したもの)は、黒こうじ菌の酵素により米から生じる成分に由来する甘いバニラ様の香りや松茸様の香り等が調和し
    た、濃厚で奥の深い香りを有しています。
風土
  • 沖縄県は高温多湿の気候で降水量も多い環境であるが、他のこうじ菌に比べクエン酸を多く生成する黒こうじ菌により健全な発酵が促され、その黒こうじ菌が生成
    する種々の成分により特性が形成されています。
  • 水も硬水でミネラル分が多く、微生物の働きが促進され、重厚な香味が形成されます。
  • 琉球王国当時に交易国との文化交流から様々な技術がもたらされており、蒸留酒の製法は 500 年以上前に東南アジアや大陸から伝来したと言われています。
  • 蒸留後に年月をかけて熟成する文化があり、3年以上貯蔵したものは「古酒(クース)」と呼ばれ、古酒を育てる「仕次ぎ」と呼ばれる技術も定着しています。
原料
  • こうじはAspergillusluchuensisに属する黒こうじ菌の生育した米こうじのみを用いたものであること。
  • 沖縄県内で採水した水のみを使用していること。
製法
  • 沖縄県内で発酵、蒸留、貯蔵及び容器詰めが行われていること。
  • 米こうじ及び水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機をもって蒸留したものであること。
管理期間

GI琉球管理委員会

<住  所>沖縄県那覇市港町2丁目8番9号
         沖縄県酒造組合内
<電話番号>098-868-3727

地理的琉球

 

日本酒

名称 日本酒
産地の範囲 日本
酒類区分 清酒
特徴
  • 日本酒は、貴重なお米から製造される特別な飲み物として、古来より冠婚葬祭や年中行事の際に飲まれる習慣があり、日本の伝統的なお酒として、私たちの生活や文化に深く根付いています。このことを踏まえ、国税庁は平成27年12月に日本の地理的表示として「日本酒」を指定しました。
指定による効果
  • 原料の米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒のみが「、日本酒」を独占的に名乗ることができる。
  • 外国産のお米を使用した清酒や、日本以外で製造された清酒が国 1 内市場に流入しても「日本酒」とは表示できないため、区別が容易に。
  • 海外に対して、「日本酒」が高品質で信頼できる日本のお酒であ 2 ることをアピールできる。
  • 海外でも、地理的表示「日本酒」が保護されるよう国際交渉を通じて各国に働きかけることで、「日本酒」と日本以外で製造された清酒との差別化が可能に。「日本酒」のブランド価値向上を図ることができる。
海外における保護に向けて
  • 酒類の地理的表示制度は、WTOにおけるTRIPS協定により知的財産権として認められた制度であり、海外でその名称を保護していくために有効な制度です。
  • 国税庁では、日本産酒類の地理的表示が適切に保護されるよう、国際交渉を通じ働きかけを行っています。
  • 平成31年2月に発効した日EU・EPAにおいて、酒類の地理的表示の相互保護を実現しました(令和3年2月に、日本側3産品、EU側7産品が相互保護の対象に追加されました)。
  • 令和2年1月に発効した日米貿易協定において、米国が日本産酒類 の地理的表示の保護に向けた検討手続を進めることを約束しました。
  • 令和3年1月に発効した日英包括的経済連携協定(EPA)において、酒類の地理的表示の相互保護を実現しました。

 

ここまで、日本のお酒に関わる地理的表示について解説していきました。それぞれの地域ごとにはっきりとした特徴があり、その特徴が地域性に因っているものだとお分かりいただけたと思います。

これこそがお酒の面白さであり、生産者や消費者にとって重要な要素となっているのです。

 

 

 

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