宮城県石巻市に根ざす平孝酒造は、1861年の創業以来、地域に密着した酒造りで知られています。この地が抱える豊かな漁場「三陸・金華山沖」とその歴史ある風土は、平孝酒造の銘柄「日高見」に深く反映されています。今回は、その歴史と現在の取り組み、そして未来への展望を深掘りします。

平孝酒造の歴史は、文久元年(1861年)に遡ります。「日高見」という名は、古くからこの地を指す名「日高見国」に由来しており、太陽が豊かに照らす肥沃な土地を象徴しています。蔵は石巻市の旧北上川河口に位置し、四季折々の魚介が水揚げされる場所としても知られています。こうした地域の特性を活かし、「魚でやるなら日高見だっちゃ!」をスローガンに掲げ、魚介類との相性を考慮した酒造りを行っています。フレッシュは魚介類にはフレッシュなお酒を目指しています。

2011年の東日本大震災では、平孝酒造も甚大な被害を受けました。しかし、この試練を乗り越えるため、被災した酒を「震災復興酒 希望の光」として新たにブランド化。全国からの支援を受けながら復興への歩みを続けています。震災後は設備の近代化を進め、品質の一層の向上を図りました。特に、麹室、酒母室、発酵室を全てステンレス張りに改修し、衛生管理を徹底。これにより、よりクリーンで質の高い日本酒を提供できるようになりました。

精米から水にかけるまでの丁寧な処理 平孝酒造では、精米工程に特に注意を払っています。米の外側に含まれるタンパク質や脂質は、日本酒の味を損ねる原因となるため、これを取り除くために精米度を細かく調整。ただし、精米しすぎると米が持つ本来の旨味も失われてしまうため、そのバランスを見極める技術が求められます。

洗米プロセスは、米の吸水率を均一化し、麹菌が均等に生育するための基盤を作ります。水に浸す時間も酒造りの経験に基づいて厳格に管理され、米の芯まで適切な水分が行き渡るよう調整されます。この水の吸い上げ具合が、後の麹作りや発酵の均一性を保証するため、非常に重要です。

蒸し米の工程とその影響 蒸し米の工程は、平孝酒造の酒造りにおいてさらに重要な役割を担います。この段階で米の状態を最適化することが、麹の質や発酵具合に直接影響を及ぼします。米を蒸す際には、均一に熱が通るように丁寧に監督し、蒸し具合を細かく調整します。理想的な蒸し米は、表面はしっかりとしていて内部はやや粘り気があり、これが高品質な麹造りの基本とされています。

平孝酒造では、これらの米の処理工程を通じて、酒質の均一性と高品質を追求しています。米一粒一粒に対する丁寧な扱いが、後の醸造過程での味わい深い日本酒を生み出す基礎となります。また、これらのプロセスはすべて、伝統的な技術と現代の科学的知見を組み合わせることで、さらに洗練されています。

長年務めた南部杜氏の引退後は、若い蔵人たちへとバトンタッチ。地元の若者を積極的に採用し、新たなアイデアとエネルギーで酒造りに挑んでいます。また、地元石巻の寿司とのコラボレーションを進めるなど、地域産業と連携した新しい試みも展開。地元食文化の振興とともに、酒蔵からの復興支援も進めています。

平孝酒造は、伝統を守りつつも常に革新を求める酒蔵として、地元宮城の自然と共に成長を続けています。震災からの復興を遂げつつも、地域社会との連携を深め、日本酒文化の新たな可能性を模索しています。これからも、その挑戦と進化に期待が集まります。

近年の受賞歴

2024年
    
全国新酒鑑評会において金賞を受賞。
2019年
    
宮城県清酒鑑評会において最高賞となる宮城県知事賞の「県産米・純米吟醸酒の部」を日高見が2年ぶり4回目の受賞。
2017年
    
宮城県清酒鑑評会において最高賞となる宮城県知事賞の「県産米・純米吟醸酒の部」を日高見が受賞。

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