結婚式やお祝い事でよく飲まれているスパークリングワイン。フルーティーな味わいと炭酸の爽快さが好きでよく飲んでいるという方も多いでしょう。
しかし、いくら好きと言ってもスパークリングワインの製法まで理解しているという方は少ないと思います。
「スパークリングワインの原料はなに?」
「スパークリングワインはどうやって造られている?」
このような疑問をお持ちの方に、お酒を専門とする私たちが詳しく解説していきますね。
最後まで読んでいただくことで、スパークリングワインの製造方法について理解することができ、今まで以上にスパークリングワインを楽しむことができるようになります。
スパークリングワインの主な製法とは?
スパークリングワインもワインの一種ですので製造工程には共通する部分が多いですが、スパークリングワインと決定的な違いがあります。
そう、それは、泡ものと言われる炭酸の製法です。つまり、ビンの中に炭酸を発生させるプロセスが地方やメーカーによって違うんですね。
炭酸を作る独自の製法が5つあります。
- トラディショナル方式
- シャルマ方式
- トランスファー方式
- リュラル方式
- 炭酸ガス注入方式
この5つの製法のポイントをおさせると、スパークリンワインの選び方にも幅が広がりますよね。それでは、スパークリングワインが出来るまでの工程を詳しく解説していきます。
トラディショナル方式
瓶内で二次発酵をさせて造るスパークリングワインの製法のひとつです。一次発酵は、果汁からワインになるための発酵で白ワインの発酵過程だとご理解するとわかりやすいでしょう。
瓶内二次発酵とは、瓶の中にベースとなるワインを入れ、さらに酵母と糖を追加させることで糖を分解してアルコールと二酸化炭素を発生させます。
これを2ヶ月かけて行うことでワインを緩やかに二次発酵させ普通のワインにはない、炭酸を含んだワインができます。この酵母と糖がアルコールや炭酸を発生させるメカニズムについては、こちらのページをご覧ください。
発酵後も熟成や滓引きといった工程が必要となり、スパークリングワインの製法の中で最も手間がかかる製法です。
最高級スパークリングワインの製法として知られており、別名はシャンパーニュ製法とも呼ばたりします。
名前の通りシャンパンはシャンパーニュ地方でシャンパーニュ方式(トラディショナル方式)を用いて造られたスパークリングワインだけがシャンパーニュを名乗ることができます。
シャルマ方式
瓶内で発酵させるトラディショナル方式と違い、シャルマ方式では大きな密閉タンク内で二次発酵を行います。
大きなタンクで製造できるため、一度に大量のスパークリングワインが生産できるメリットがあります。
製造コストを抑えたい場合に用いられる製法で、フルーティな仕上がりになる特徴があります。
トランスファー方式
トラディショナル方式と同様に瓶内で二次発酵を行う製法です。
しかし滓引きを瓶で行うトラディショナル方式と違い、トランスファー方式では発酵が終わると加圧されたタンクに移し、まとめて滓引きを行います。
トラディショナル方式を簡略化したのがトランスファー方式であり、コストを抑えたい場合に用いられます。
リュラル方式
トラディショナル方式と同様に瓶内で発酵を行います。
しかし二次発酵でさらに酵母と糖を追加するトラディショナル方式と違い、リュラル方式では一次発酵で残った糖のみを使って発酵させていきます。
そのためアルコール度数は低くなり、ブドウの糖分のみを使って発酵させていくため香り豊かなスパークリングワインができます。
炭酸ガス注入方式
その名のとおりベースとなるワインに直接炭酸を注入し、人工的にスパークリングワインを造る製法です。
大量消費される安価なスパークリングワインの製法で多く用いられてますが、ベースとなるワインの品質と泡の性質がマッチしていれば炭酸ガス注入方式であっても高品質なスパークリングワインを造ることができます。
スパークリングワイン(トラディショナル)の製造工程
ワインの一種であるスパークリングワインは発泡性のワインのことを言い、産地や原料、製法によって呼び方が異なります。
はじめに紹介したようにスパークリングワインには主に5つの製法がありますが、今回は一番有名なトラディショナル方式の製法について解説していきます。
発酵までの基本は白ワインを造る製法と変わりません。しかし、トラディショナル方式は、ビンの中で炭酸を生み出すために二次発酵させたりビンの中での特殊な作業があります。この伝統的なシャンパーニュ式の工程を知れば、泡もの好きになったも同然ですね。
その前に、一次発酵までの作業をおさらいしましょう!
ブドウの収穫
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ブドウの選定
↓
ブドウの除梗
↓
ブドウを潰す(破砕)
↓
ブドウを圧搾(プレス)
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一次発酵
もし、ここまでの工程をもっと詳しく知りたい方はこちらのページの白ワインの発酵過程をご覧ください。よりご理解が深まると思います。
それでは、ここからトラディショナル方式の特色を工程ごとに説明していきますね。独特の言葉がありますので楽しみのひとつとしてください。
調合(アッサンブラージュ)
アッサンブラージュとは、ブレンドという意味です。シャンパーニュでは、ブドウ品種やブドウの畑、異なる年度のワインを他のワインとブレンドさせる工程が入ります。
なぜ、ブレンドさせるのでしょうか?これについては、メーカーごとに考え方の違いはありますが、大きな意味でいえば、よりワインの風味や味わいを立体化したい。複雑性を増したいといった方針があります。
瓶詰(ティラージュ)
清澄濾過作業が終わると瓶詰め作業に入りますが、ワインは繊細な飲み物で、不純物が入ってしまうと一気に味わいが変化してしまいます。
そうならないためにも、ワインを入れる瓶はしっかりと洗浄し乾燥したのちに瓶詰め作業を行わなければなりません。
ワインを瓶に注入する際にも、飛沫をあげて適当に入れるのでなく少しずつ丁寧に入れていきます。
瓶詰め作業もワイン造りの過程で非常に重要な工程であり、ワインの味わいを決める工程であると言えます。
瓶内二次発酵
瓶内二次発酵とは、瓶の中にベースとなるワインを入れ、さらに酵母と糖を追加させることで糖を分解してアルコールと二酸化炭素を発生させる工程です。
これを2ヶ月かけて行うことでワインを緩やかに二次発酵させ普通のワインにはない、炭酸を含んだワインができます。
動瓶(ルミアージュ)
二次発酵後は滓が瓶内に溜まっており濁っているため再び透明性を取り戻す必要があります。
動瓶(ルミュアージュ)の目的は滓引き(デゴルジュマン)の準備として滓を瓶口に集めることです。
瓶口に集めるには、熟成時に横に寝かされていたボトルを少しずつ瓶口を下にして倒立させなければなりません。
この作業を動瓶(ルミュアージュ)と呼びボトルを少しずつ左右に回しながら立てていき、澱を瓶口の栓の近くに集めます。
以前は手作業で行われていましたが、現在はほとんどの機械化されています。
滓引き(デゴルジュマン)
滓引き(デゴルジュマン)とは、動瓶(ルミアージュ)によって瓶口に集められた滓を取り除く作業です。
滓引き(デゴルジュマン)をするために、まずボトルの瓶口を-27℃の溶液に浸します。
こうすると瓶口に集められた滓が凍って塊となります。この状態のまま栓を開けると内部の気圧によってこの氷塊が弾き出されます。
この際に失われる圧力とワインはごくごく少量です。
添加(ドサージュ)
滓引き(デゴルジュマン)によって失われた少量のワインを補充するとともに、糖度の調整を目的として行われる工程です。
加えるのはリキュールで、添加(ドサージュ)される量はワイナリーによって決めていたり、銘柄によって変えられるなどワイナリーによって違いがあります。
打栓
添加(ドサージュ)が終わるとすぐに打栓が行われます。
コルク栓を瓶口に圧縮して入れ、キャップを上から重ねてコルクワイヤーで固定します。
密閉性を最大限に高めたとしても栓を通じて空気が流入します。
コルク栓の密閉性は完璧なものではないのです。こうして打栓後も少量の酸素により熟成が続きます。
いかがだったでしょうか。
代表的なトラディショナル方式を中心に説明しました。泡ものは名前のごとく炭酸を発生させるための技術が各社色々だということをご理解いただけたと思います。
このように製法と原料の違いによる味わいや風味を感じてもらえるとスパークリングワインの選び方に楽しさが加わりますよね。