日本酒は水が命 日本酒醸造に使う原料水

 

日本酒の成分は80%ほどが『水』で、残りはアルコール15%、その他の成分が数%の構成になります。

 

お酒造りの水は、お米の50倍の量が必要とされています。具体的には、お米の洗米・浸漬、仕込水に使ったり、割水用や瓶詰めなど大変多くの水が必要なんですね。

 

つまり、良質なお水を大量に確保できることは蔵元にとって必要不可欠なのです。詳しいお酒の工程で水を使う作業はこちらをご覧ください。

 

それでは、日本酒のために必要な「お水」とはどのようなものなのでしょうか。

酒造用水とは

酒造用水とは、日本酒造りに使われる醸造用水と、瓶詰めなどに使われる瓶詰用水の総称です。

 

酒造用のお水は、私たちが普段使用する水道水より、成分の基準が厳しく設けられています。なぜなら鉄やマンガンなどは、日本酒に悪影響を及ぼすので基準が厳しくなってるんですね。

 

酒造用水の有効成分と有害成分

酒造用水には有効成分と有害成分が含まれています。地下水などで、カリウムやマグネシウムを多く含む水源を持つ酒蔵は酒造りにメリットになります。一方で、鉄分やマンガンなどを多く含む水源なら除去するための工程が増えるのでデメリットといえるでしょう。

 

有効成分 カリウム 微生物の栄養源です。この成分は麹菌や酵母の増殖を助けます。麹菌や酵母が育たないと発酵が正常に進まない場合があります。
リン酸
マグネシウム
有害成分 マンガン 紫外線による劣化を速めてします。
鉄分 日本酒を褐色化させ、香りを悪くする作用があります。

 

このような成分を考えると、酒造りに適した水の条件は、豊富な雨や雪といった降水量が必要です。そして、その水が月日をかけて地表から地下へと地層深く濾過され有効成分を含んだ水になっていくのでしょうね。

 

兵庫県の灘の酒は、六甲山からの水脈がいいんでしょうね。日本には北海道から、九州まで自然豊かな山があり、川があるので各地方が日本酒にはもってこいの地形になります。

 

硬度とは

硬度は、お水の固さを表す数値です。

 

現在日本ではアメリカ硬度を用いていますが、戦前はドイツ硬度が使われていました。醸造業界も長らくドイツ硬度が使われていた為、日本酒の硬度を表すのはドイツ硬度が多いです。しかし最近はアメリカ硬度で表示されることもあるようです。

 

  • ドイツ硬度⇒100mlの水に、カルシウム・マグネシウムが酸化カルシウム(CaO)として1mg含まれるとき硬度1dh
  • アメリカ硬度⇒1000mlの水に、カルシウム・マグネシウムを炭酸カルシウム(CaCo₃)として1mg含まれるとき硬度1ppm

 

ドイツ硬度1dh=アメリカ硬度17.8ppm

 

水の硬度は日本酒の味わいに影響を与えます。軟水で仕込むと「軽くきれいな味わい」、硬水で仕込むと「酸が強めでキリッとした味わい」になると言われます。

硬度の種類

硬度の目安は、日本の酒造用水と世界保健機関では少し違います。昔から酒造り業界では、灘の水は硬水と言われますが、世界基準からみると中硬水になります。グラフでみると静岡、新潟、伏見は軟水で広島、兵庫がやや硬水となります。

 

このようにみると日本の水は、世界から見たらほとんどが軟水から若干の硬水ということになります。フランスのエヴィアンやコントレックスなどの硬水は非常に高い硬水ということになりますよね。

 

水の硬度について

 

なぜ、日本とヨーロッパの水は違うのか?

水は含まれるミネラル(カルシウムやマグネシウム)の配分が少ないと軟水で、多いと硬水になります。

 

なにが違うのでしょうか。実は、日本の地下水は滞留時間が短いので地中のミネラル分の溶け込みが少なく『軟水』の傾向になります。島国の日本の地形を考えると山地から平野にかかる距離が短く急斜面だからでしょう。

 

一方で、フランスなどヨーロッパ諸国は大陸です。ヨーロッパ大陸の地下水は滞留期間が長く、石灰岩も多いので硬度300以上という水もあるくらいミネラルが多く『硬水』の傾向にあります。この地形によるものが大きな要因になります。

 

ここまで硬度が違うと料理などにも影響がありそうですね。料理でいえば、硬水の味わいが強いためにフランス料理は直接お水は使わず、蒸したり炒めたり、牛乳やワインを加えて煮込んだりします。

 

軟水の多い日本では、煮物汁物といった直接お水を使った日本料理が多くなりますよね。

 

これと同じ法則でヨーロッパのワイン造りを考えてみましょう。ワインは葡萄の果汁と糖分を発酵させて造るのでお水は使いません。牛乳やチーズもそうですよね。

 

でも、ヨーロッパの中でも比較的日本の水質に似ているイギリスではウイスキー造りが盛んです。ウイスキーは蒸留するので水を利用します。水の違いは食を変え、文化にまで影響を及ぼす重要なものなのです。

 

 

 

 

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