新澤醸造店は、1873年に宮城県大崎市で創業し、地元に根差した銘柄「愛宕の松」や「伯楽星」を通じて、日本酒の真髄を追求し続けています。この記事では、その長い歴史、独自の酒造りのこだわり、そして現代における革新的な取り組みを深掘りします。

2011年3月11日の東日本大震災は、新澤醸造店にとって壊滅的な打撃でした。蔵の全壊という重大な損害を受けたにも関わらず、新澤醸造店はこの困難に立ち向かい、見事な復興を遂げました。この出来事は、蔵だけでなく、地域社会全体に深い影響を与え、新澤醸造店の今後の方向性を大きく変えることになります。

震災直後、多くの酒蔵が被害を受ける中、新澤醸造店は製造設備の大部分を失いました。しかし、社長の新澤巖夫氏のリーダーシップのもと、スタッフと共に酒造りを再開する決断を下しました。蔵の再建ではなく、新たな土地に製造部門を移転する選択をし、山形県川崎町に新しい設備を建設しました。この移転は、ただ環境を変えるだけでなく、最新の醸造技術と設備を導入する絶好の機会となりました。

新澤醸造店の歴史は、地元の風土と深く結びついています。創業者の新澤家は、何世代にもわたり酒造りを行い、その過程で地域文化と密接な関係を築き上げました。「愛宕の松」は、地元で親しまれるだけでなく、地元の詩人によって詠まれるほど、その風味と歴史が評価されています。この深い歴史感が、新澤醸造店の製品に独特のアイデンティティを与えています。

新澤醸造店は、伝統的な酒造りの枠を超え、革新的なアプローチで注目を集めています。特にその象徴的な出来事が、入社3年目にして22歳の若さで杜氏の重責を担った全国最年少の女性杜氏の登用です。この決断は、単に若さや性別にとらわれない新しい風を蔵にもたらすだけでなく、酒造りに新たな視点とエネルギーを注入しました。

社長の新澤巖夫氏から杜氏の役割を引き継いだ彼女は、その若さと斬新なアイデアで、蔵の伝統技術に新しい息吹を吹き込みます。ベテランの杜氏に依存するのではなく、蔵人全員が互いに学び合い、刺激し合う環境を重視しています。この開かれたスタイルが、革新的で品質の高いお酒を生み出す土壌となっています。

新澤醸造店では、米、水、麹の三つの要素に対するこだわりが、その日本酒の品質を左右します。特に水は、蔵王連峰からの豊かな伏流水を使用し、その中硬水が酵母の活動を促進し、味わい深い日本酒を生み出します。米に関しては、地元宮城県産の酒米「吟ぎんが」や「ぎんおとめ」を主に使用し、その品質管理には特に力を入れています。麹造りでは、最新の設備を用いつつも伝統的な手法を大切にし、熟練の技で最適な環境を整えています。

新澤醸造店は、その技術革新においても日本酒業界の先駆者であり続けています。特に彼らが導入した「ダイヤモンドロール精米機」と「扁平精米機」は、日本酒製造における革命的な進歩を象徴しています。 一般的に日本酒の精米率は70%前後ですが、新澤醸造店では、これを大きく上回る0.85%の極限まで精米する技術を実現しました。ダイヤモンドロール精米機を使用することで、米粒を極限まで削り、必要最小限の部分のみを残すことが可能です。この極めて高い精米率は、日本酒の味わいをよりクリアにし、雑味のない繊細な香りを強調します。扁平精米とは、真吟精米ともいわれ、玄米の長さ・幅よりも厚さ方向を重視して削る精米方法です。この方法により、スッキリとした繊細な酒を醸すことができるようになります。

新澤醸造店では、お酒のほとんどが「1回火入れ」のみで製造されており、2回火入れの商品は一切取り扱っていません。これは、お酒の自然な風味を可能な限り保持するための選択です。特に生酒に関しては、その品質が変化しやすい性質を考慮し、冬季限定で提供しています。このような季節に合わせた提供は、お酒の鮮度と品質を最優先する新澤醸造店のポリシーを反映しています。新澤醸造店では、出来上がったお酒を高価格帯のものからカップ酒に至るまで、すべてマイナス5度の冷蔵庫で保管しています。この低温保存は、日本酒特有の繊細な味わいを長期間保つために非常に効果的です。冷蔵により、お酒が酸化するのを遅らせ、フレッシュな味わいを長く楽しむことが可能になります。

2011年の東日本大震災での蔵の全壊後、新澤醸造店は山形県川崎町に製造部門を移転し、新たなスタートを切りました。この移転は、新澤巖夫社長にとって大きな決断であり、新たな環境での酒造りへの挑戦でもありました。新設備と豊かな自然環境を生かし、彼らは「究極の食中酒」を追求し、その努力は国内外で高く評価されています。特に、「世界酒蔵ランキング」での連続1位獲得は、その技術と品質が国際的に認められた証です。 新澤醸造店は、伝統と革新のバランスを重視しながら、常に高品質な日本酒を追求し続けています。その結果、地元宮城県から世界へとその名を轟かせる日本酒を醸し出し続けています。これからも、その挑戦と進化に期待が寄せられています。

近年の受賞歴

2024年
    
フェミナリーズ世界ワインコンクール2024 純米大吟醸酒部門「あたごのまつ 吟のいろは 純米大吟醸」【金賞】
ワイングラスでおいしい日本酒アワード2024 メイン部門「あたごのまつ 鮮烈辛口」【最高金賞】
2023年
    
世界酒蔵ランキング【第一位】
MONACO SAKE AWARD 2023 純米大吟醸/吟醸部門「あたごのまつ 純米吟醸 ささら」【金賞】
ルクセンブルク酒チャレンジ2023「あたごのまつ 鮮烈辛口」【銀賞】
Oriental Sake Awards 2023 Regional Awards 愛宕の松 本醸造(県内)【The Best of Miyagi】
全米日本酒歓評会2023 純米部門「あたごのまつ 特別純米」【準グランプリ】
全国燗酒コンテスト2023 プレミアム燗酒部門「あたごのまつ 特別純米」【金賞】
MILANO SAKE CHALLENGE 2023 純米大吟醸・大吟醸部門「あたごのまつ 純米大吟醸 白鶴錦」【ダブル金賞】
Kura master2023 純米酒部門「あたごのまつ 純米吟醸 ささら」【プラチナ賞】
インターナショナルワインチャレンジ2023本醸造部門「あたごのまつ 鮮烈辛口」【金賞】【トロフィー賞(1位)】
ワイングラスでおいしい日本酒アワード2023プレミアム純米部門「あたごのまつ 純米吟醸 ささら」【金賞】
2022年
    
世界酒蔵ランキング【第一位】
インターナショナルサケチャレンジ2022純米吟醸部門「あたごのまつ 純米吟醸 ささら」【金賞】
スペイン酒類国際コンクール2022「あたごのまつ 純米大吟醸 白鶴錦」【金賞】
MILANO SAKE CHALLENGE2022利き酒部門ティスティング賞純米大吟醸・大吟醸部門「あたごのまつ 純米大吟醸 白鶴錦」【プラチナ賞】
フェミナリーズ世界ワインコンクール 純米酒部門「伯楽星 純米吟醸」「あたごのまつ 純米吟醸 ささら」【金賞】
ワイングラスでおいしい日本酒アワード 2022 メイン部門「あたごのまつ 特別純米」【最高金賞】

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