日本酒度、酸度、アミノ酸度、アルコール度数・・・
なぜ日本酒には、いくつも度数があるんでしょうか?
それは、日本酒が複雑な造りから生まれる飲み物だからです。日本酒はワインなどと比べ造りが複雑なんです。糖化と発酵を同時に並行して造ります。だからお酒にはいろいろな成分が含まれています。ほんとに蔵元さん、杜氏さんはすごいですよね。
話は少しそれましたが、この度数は、日本酒のラベルに表示されています。度数が理解できると日本酒の味わいを想像できます。日本酒選びの楽しみが、ひとつ増えるように説明していきますね。
日本酒の成分の種類
日本酒のラベル、裏ラベルをじっくり見てみましょう。
銘柄や蔵元が記載されています。アルコール度数や、原材料も記載されているものが多いです。日本酒は基本的にお米と水で造られています。商品によっては醸造アルコールが加えられて造られるものもあります。
裏ラベル(裏側のラベル)がない商品もありますが、表面には必ずラベルが貼ってあるものです。中には和紙タイプのもの、絵が描いてあるもの、シンプルなもの、変わった形のものもあって、見ているだけでも楽しいものです。
下記のように、蔵元によってはラベルに日本酒度、酸度、アミノ酸などの記載がされているお酒もあります。記載がないお酒でも、ホームページなどで公表されているものが多いです。それでは日本酒度や酸度、アミノ酸度を一体どのように読み取ればいいのか説明していきます。
日本酒度とは
日本酒度は、甘辛度の目安となる数値になります。糖分の量によってプラス、マイナスの数値で示されます。一般的にプラスが辛口、マイナスが甘口といわれるんですね。このプラス、マイナスの表示は、お酒の中の糖分が多ければマイナス、少なければプラスとなります。
なぜ、糖分が多いのにプラスなんだと思う方もいると思います。これは、日本酒度が水を基準にしているからです。糖分を含んだ日本酒は当然水より重くなりますよね。水から考えて比重が重いのでマイナスと表示されます。反対に糖分が少なければ水より軽いのでプラスとなります。
つまり、プラスで数字が上がるほど辛口度が強くなり、マイナスで数字が上がるほど甘口度が強くなるんですね。+10以上ともなると商品名に超辛口などとついていることが多いです。
日本酒度がプラスの酒はホントに辛口?マイナスは甘口?
日本酒度がプラスなのに甘く感じたり、マイナスなのに辛く感じることはありませんか?
実は、そのとおりです。表示の上ではプラス、マイナスとなっていても飲んでみると甘く感じたり、辛く感じたりします。理由としては、日本酒の甘辛度が、糖分だけで感じるものではないからです。日本酒には、糖分以外に酸などの成分の存在のはご存知でしょうか。
具体的にいえばアミノ酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸などが含まれています。この酸の刺激は、飲む人によって辛く感じさせる要素にもなるんですね。このように、いろいろな成分が複雑な味わいを引き出しています。
また、香りも味わいに影響します。フルーティーな香りなら甘く感じたりしますよね。さらに、お酒の強い人弱い人、初心者の人など個人個人の経験にも大きく影響されるのです。
たとえば-5の甘口の酒でも辛く感じる人もいたり、+3の辛口を甘く感じる人もいます。だから、マイナス表示なのに、甘く感じない・・・と考えすぎたりしないでくださいね。
日本酒度のプラス、マイナスだけでは甘辛度は決まらないんです。なので、あくまで数値としての目安だと理解するといいでしょう。
日本酒度の数値の目安
日本酒度はあくまで目安といっても、おおかたの目安を知っている方が、お酒選びの幅が広がります。
日本酒度の目安
数値 | 味わい |
+10以上 | 大辛口 |
+5.0 ~ +9.9 | 辛口 |
±0 ~ +4.9 | やや辛口 |
±0 ~ ー4.9 | やや甘口 |
ー5.0 ~ ー9.9 | 甘口 |
ー10以上 | 大甘口 |
上記のような日本酒度のレンジを頭にいれながら、ご自身の経験で精度を上げていくのも日本酒の楽しみにつながります。
今流行りの甘口発泡清酒などはー100ぐらいあったりします。このタイプのお酒の特徴は、糖度が高すぎるのですが、酸度も高くして作っています。飲み口は甘いのですが、コテコテに甘いのではなく、酸がキリッとしまってジューシーな味わいになります。
酸度とは
酸度は、日本酒の中にある酸の量を示す数値です。日本酒における主な酸は、乳酸、リンゴ酸、コハク酸になります。酸の数値は1.0~3.0ぐらいが大半です。一般的に酸が高いと辛く感じ、低いと甘く感じます。また、酸が多いとは、酸味を強く感じるでしょう。日本酒業界では芳醇ともいわれます。酸が低いと調和されてスッキリ感、軽快さを感じます。いわゆる淡麗といわれますね。
酸の数値は、日本酒度のようにレンジの幅は広くありません。なので0.1の単位で数値が上がると味の影響を感じる人もいます。たとえば酸度が1.3と1.5でも味の感じに違いがあります。
平均的な数値は
種類 | 酸度 |
普通種 | おそよ1.2 |
本醸造酒 | およそ1.3 |
吟醸酒 | およそ1.3 |
純米酒 | およそ1.5 |
この数値をみても、酸度の低いのもの淡麗、純米のような酸度の高いものを芳醇といわれることがわかりますよね。
ただ、甘辛度に関しては、酸度の数値もあくまで目安と考えてください。自分好みのレンジとして考えるとお酒選びの幅が広がりますよね。
少し専門的な話になりますが、酸についての説明もしますね。乳酸は丸みのある酸味。リンゴ酸はシャープな酸味。コハク酸は苦味成分になります。つまり、芳醇といわれるものは酸が多い。それだけ複雑な味わいになります。
ちなみに、私はこの酸を別々で味わったことがあります。同じ酸ですが味の違いに感心しました。日本酒の奥深さを教えてもらったと今でも覚えています。
アミノ酸とは
アミノ酸度は、日本酒に含まれる旨味成分であるアミノ酸の量を示した数値です。旨味成分ですので高ければ旨味が増し、コクなどを感じます。旨味が少ないとは、甘味や酸味の味わいの方が際立ち、酒質がスッキリと感じられるんですね。
一般的には、アミノ酸度が高いと芳醇で濃厚といわれ甘く感じます。低いと淡麗、キレがあり辛く感じる日本酒といわれます。この感覚も、日本酒度や酸度と同じように個人差があるので、あくまでも目安として覚えることにしましょう。
アミノ酸の数値も、レンジの幅は広くありません。0.1単位で味の影響を感じる人もいます。
平均的な数値は
種類 | アミノ酸度 |
普通種 | おそよ1.3 |
本醸造酒 | およそ1.3 |
吟醸酒 | およそ1.4 |
純米酒 | およそ1.6 |
この数値をみても、アミノ度の低いのもの淡麗、純米酒のようなアミノ酸度の高いものを芳醇といわれることがわかりますよね。
ただ、こちらも甘辛度に関しては、アミノ酸度の数値はあくまで目安と考えてください。自分好みのレンジとして考えるとお酒選びの幅が広がりますよね。
参考に、料理と合わせるコツは、濃厚なお酒はしっかりとした料理がオススメです。反対に淡麗のお酒はあっさりとした料理に合うといわれます。
日本酒度と酸度のグラフから見る濃淡甘辛度とは
個別に日本酒度、酸度、アミノ酸を見てきましたが、日本酒度と酸度の数値をグラフにして濃淡甘辛度を表したグラグを最後に見ていきます。
日本酒の味わいには、芳醇辛口、芳醇甘口、淡麗辛口、淡麗甘口といった表現をよく耳にします。これらを鑑評的に表現したグラフがこちらになります。
こちらを見ると日本酒度がプラスだからと言って辛口とは限りません。また、酸度も一定の数値から濃醇、淡麗と分かれていないことがご理解いただけると思います。つまり、辛口、甘口と濃醇、淡麗の味わいには日本酒度と酸度の数値による関係で成り立っています。
その味わいの基準をこのグラフで表しています。なので、日本酒を本格的に評価したい方は、このグラフで基礎作りをするのもいいのではないでしょうか。
ただ、先ほども言いましたが濃醇、淡麗にはアミノ酸も関係しています。アミノ酸が多いと芳醇、コクが深く甘口と感じられます。反対にアミノ酸が低いと淡麗でスッキリで辛口と感じます。なので、日本酒度と酸度の違いだけで考えるのではなく、あくまで目安としてグラフから読み取っていただけるといいのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?日本酒には数値だけでは分からない甘辛度がありますよね。酸があったり、旨味があって味わいの要素が複雑に絡み合っています。そして、個人の好み、感覚や経験の違いもあるので結局のところ飲んでみて個々が感じるものなんですね。
ただ、初めて買う銘柄を選ぶとなると何でもかんでも試してみるには種類が多すぎます。このような数値を目安に選ぶと、早く好みの銘柄に出会えることになるでしょう。その意味でも日本酒選びには、ラベルに記載されている数値を確認する習慣をつけるといいでしょう。