皆さんはウイスキーがどうやって作られているのか気になったことはありませんか?
ウイスキーを作る時は製麦から始まり、原料の種類の厳選など、一つ一つの工程が重要になってきます。一つ一つの工程を丁寧にクリアして作られているので、製造工程を知ることでさらにウイスキーを味わって飲むことができるようになるでしょう。
今回は、そんなウイスキーの製造工程について詳しく解説します。ウイスキーのことをもっと知りたい人は、是非とも最後まで読んでいってくださいね。
ウイスキーの製造工程
1. 製麦
2. 浸漬
3. 発芽
4. 焙燥
5. 粉砕
6. 糖化
7. ろ過
8. 発酵
9. 蒸溜
10. 貯蔵・熟成
11. 調合
12. 後熱
13. 瓶詰
以上の工程を行うことによってウイスキーが製造されます。ウイスキーの歴史からみると元々単式蒸留焼酎は昔からの伝統的な製造方法で、単式蒸留器を使ったアナログな方法でウイスキーが作られています。
この単式蒸留器で作られるウイスキーのアルコール度数は基本的に元の液体の約3倍程度になり、アルコール度数を高めたいけど原料の風味を残すことができるのが特徴です。
そして1回の蒸溜で製造されたウイスキーのアルコール度数を高めるためさらに蒸溜を行います。アルコール度数を高めるために何回も蒸溜させるのも単式蒸留焼酎ならではの製造工程になります。そのため、目的のアルコール度数になるまで3回程度蒸溜させることも珍しくありません。
製麦(せいばく)
ウイスキーの製造工程で一番最初に行われるのは、大麦から麦芽を作るための製麦です。ウイスキーを作るために大麦を初めとする原料を糖化させなければならず、その糖化を行うために必要なのが大麦が発芽する時に生み出される酵素です。
この酵素があるからこそ、製麦が完了します。それでは、製麦についてご説明しましょう。
原料の種類
製麦で使われる原料の種類は、どんなウイスキーを作るかによって全く違います。製麦で使われる原料の種類は、以下の通りです。
- モルトウイスキーは基本的に大麦しか使われていません。
- グレーンウイスキーは主に大麦が使われていますが、ライ麦やトウモロコシも使われることがあります。
モルトウイスキーを作る場合は大麦を原料としますが、グレーンウイスキーを作る場合は主に大麦を初めとする穀物類を使用するので覚えておきましょう。
浸漬・発芽・乾燥
各工程を下記の表にまとめました。
浸漬 | まず最初に、後に必要になる酵素を作るために大麦を初めとする原料を発芽させなければならないので、原料を水に浸して発芽するのを待ちます。 |
発芽 | 原料を水に浸していると徐々に発芽していきますが、ここで気を付けなければならないのは乾燥の工程に移行するタイミングです。原料が発芽して成長し過ぎてしまうと逆に酵素が失われてしまうので、ちょうど良く成長したらすぐに乾燥させる必要性があります。 |
乾燥 | 発芽して成長するのを止めるためには、ピートや石炭を焚いて乾燥させることになります。 |
なお、ウイスキーの独特な香りを発生させているのが、この製麦の段階における発芽の成長を止める過程です。
このタイミングでピートや石炭を焚いて成長を止めますが、代わりにウイスキー独特のピート香やスモーキーな香りを発生させています。
これが単式蒸留焼酎で製造されたウイスキーの香りの秘密です。
粉砕・糖化・麦汁
- 粉砕:製麦によって発芽の成長を止めて乾燥させた原料を細かく粉砕していきます
- 糖化:粉砕した原料に暖かい仕込み水を加えていきます。この時に原料から発生するでんぷんに対して酵素が働きかけることによって糖化が始まります。
- 麦汁:原料から発生する酵素がでんぷんを糖分に変えるため、甘い麦汁(ウォート)が作られていきます。なお、この時の麦汁には原料の殻が混ざっている状態なので、ろ過して殻を取り除く必要性があります。
画像でいえば、一番左のタンクに粉砕した原料を入れます。そして右側の装置によって仕込み水を温め、パイプを通じて粉砕したタンクに温かい水が注ぎこまれていきます。
実はこの段階でウイスキーの風味を発生させている秘密があります。でんぷんを糖分に変える糖化が行われている過程で、原料に含まれているたんぱく質がアミノ酸に変化するのが大きなポイントです。
仕込み水やアミノ酸が加わることによってウイスキーの風味を引き立たせてくれていると言えるでしょう。
仕込み(発酵)
糖化させて麦汁を作ったら、次に仕込みの発酵を行う作業に移ります。
この工程ではろ過した麦汁を発酵槽に移して酵母菌を添加して、2日~3日ほど日数をかけて発酵させます。
この発酵の工程でもたらされるのは、ウイスキー独特の複雑な香味です。添加した酵母菌と麦汁の中にある乳酸菌や微生物が作用することで、ウイスキーの独特な香味を引き出してくれます。無事に発酵が完了すると、アルコール度数7%~9%のモロミが完成します。
蒸留・原酒
無事に発酵が完了したら、次にモロミをアルコール度数が高い蒸留酒にするための蒸溜を行います。
基本的にモロミを2回~3回ほど蒸溜させていきますが、モルトウイスキーなら単式蒸留器、グレーンウイスキーなら連続式蒸溜器を使うのがポイントです。それでは、単式蒸留器と連続式蒸溜器についてご説明しましょう。
モルトウイスキーは単式蒸留器
モルトウイスキーはポットスチルという単式蒸留器を使って製造されています。単式なので単発しか蒸溜されない仕組みになっており、蒸溜器に入れたモロミの分だけ蒸溜されます。
ただ、単式蒸留器は1回の蒸溜で終わることは少なく、目的のアルコール度数になるまで数回蒸溜させるのが一般的です。この画像では2回の蒸留が行われます。
先ほどのモロミを右側の初溜釜で蒸留します。この蒸留したものはアルコール度数が約20度ほどのもので、これを留液として右側のに再溜釜でさらに蒸留するとニューポットとよばれる無色透明のウイスキー原酒のアルコール度数70度のものが誕生します。
アルコール度数が低いほど原料の風味が残るので、蒸溜する回数もその都度変わります。また、ポットスチルのサイズや形状によって酒質が大きく違うため、非常に奥深い蒸溜方法だと言えるでしょう。
グレーンウイスキーは連続式蒸留器
グレーンウイスキーを製造する時は連続式蒸溜器を使います。
連続式蒸溜器はコラムスチルやパテントスチルとも呼ばれており、原料の風味を残さずに高い度数のウイスキーを作りたい時に用いられる蒸溜方法です。その名の通り1回で連続して蒸溜できるのが最大のポイントで、連続してモロミが投入できます。
また、たった1回使用するだけで90度前後の度数のウイスキーが出来上がるので、手軽にクリアな味わいのウイスキーが楽しめます。
貯蔵・熟成
続いての工程は貯蔵と熟成です。貯蔵とは蒸溜の工程で出来上がった蒸溜液を様々な種類の中から好きな木製の樽に入れることで、その後しっかりと熟成する期間に入ります。
貯蔵に使われる樽の種類には、アメリカンホワイトオーク、スパニッシュオーク、フレンチオーク、ミズナラがあります。
アメリカンホワイトオーク |
北米のホワイトオークという木材を使って作られる樽で、ウイスキー産業で使用されている樽の90%がアメリカンホワイトオークが使われています。 この樽を使って熟成された樽はバニラやカラメル、ハチミツといった甘いフレーバーとアーモンドやヘーゼルナッツなどの香ばしさがあると言われているのが特徴です。 |
スパニッシュオーク | コモンオークとも呼ばれ、ヨーロッパ産オークを代表する木材です。スパニッシュオークはタンニンとポリフェノールを多く含んでおり、熟成樽として使うと甘くて重みがあるフルーティーな味わいが楽しめます。 |
フレンチオーク | セシルオークと呼ばれており、スパニッシュオークと並んでヨーロッパ産オークを代表する木材となっています。スパニッシュオークと比べるとタンニンの量は控えめですが、ウイスキーにスパイシーな香りを与えると言われています。 |
ミズナラ | 水分が多いので燃えにくい性質を持っており、日本でしか手に入らない希少な木材です。ミズナラを使用する場合は長期間熟成させなければなりません。樽の中の成分がにじみ出るまで時間がかかるため、ミズナラの特徴を最大限に発揮するためには他の木材よりもさらに長い期間を必要とします。 |
こうして熟成されたウイスキーは、お香や線香のような香りが楽しめるようになっています。
そうして熟成させるための木材の樽を選んだら、いよいよ熟成される工程に移りますが、熟成させる期間は1年や5年という短いものではありません。
ウイスキーの熟成は基本的に10年~30年と長い期間をかけ、木材独特の香り成分などをじっくりとウイスキーに馴染ませていきます。
このことから、ウイスキーの風味は熟成中に決まると言っても過言ではありません。
調合
熟成が完了したウイスキーを仕上げるために、シングスカスク、ヴァッティング、ブレンディングのいずれかの調合を行います。
モルトウイスキーかグレーンウイスキーを調合するのかによって調合方法が違うのがポイントです。
それでは、熟成させたウイスキーの調合方法についてご説明しましょう。
シングル・カスク
シングスカスクとは何も混ぜずに1つの樽のみで製造する調合方法です。
正確には調合していないので調合とは言えませんが、1つの樽の深みや味わいが楽しめるのが最大のポイントです。
シングルカスクの楽しみ方は、蒸溜所と熟成年数が同じでも樽ごとに香味などが大きく変わることにあります。
同じボトルは世界に100本~400本程度しかないという希少性も兼ね備えているため、希少なウイスキーを楽しみたいという人におすすめの方法です。
ヴァッティング
ヴァッティングとはモルトウイスキー同士、グレーンウイスキー同士を混ぜ合わせる方法です。
ブレンディング
ブレンディングとはブレンデッドウイスキーを作るための方法で、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせる方法です。
後熟
ウイスキーの調合を行った後は、後熟の工程に移ります。後熟とはウッドフィニッシュのことで、熟成した原酒を様々な樽に詰め替えることによって、原酒の味や香りに変化を与える方法です。
この方法でさらに数週間から2年ほど寝かせることで、さらなる味わいと香りが楽しめます。
最大のポイントは、一度使われた樽に後熟で使われる樽は、シェリー樽、ポートワイン樽、マディラワイン樽、ワイン樽、ビール樽、ラム樽、コニャックやカルヴァドス樽、バーボン樽です。
- シェリー樽、ポートワイン樽、マディラワイン樽は、シェリーやポートワイン、マディラワインを使用した樽に熟成させたウイスキーを詰め替えることで、それぞれのワインの味わいや風味付けができます。また、シェリー、ポートワイン、マディラワインがどのような方法で製造されたかによって、様々な風味を楽しんだりクリーミーさやスパイシーさが加わるなど、様々な楽しみ方があります。
- ワイン樽は、一般的にワインの熟成に使われる樽を使用して後熟します。後熟で使用するワイン樽は基本的にイタリアのバローロやアマローネ、フランスのバーガンディやソーテルヌといった香り高い高級ワインが入っていたものが多く、ウイスキーに鮮やかな色彩を与え、芳醇な香りを出してくれます。
- ビール樽は、文字通りビールが入っていた樽です。ビール樽にウイスキーを入れるのは珍しい方で、ホップの味わいが楽しめるのがポイントです。ナッツやカラメルなどの香ばしい香りや、コーヒーやチョコレートのような香りが楽しめるでしょう。
- ラム樽は、サトウキビの糖蜜や絞り汁を原料として製造されたラム酒が入っていた樽です。この樽にウイスキーを入れることによって濃厚な味わいが楽しめるだけでなく、カラメルのようなビターさや香ばしさが楽しめます。そして、強い甘みが感じられるのも大きな特徴です。逆にウイスキーが入っていた樽にラム酒が詰め替えられることもあるそうです。
- コニャックやカルヴァドス樽は、それぞれの華やかな香りをウイスキーに与えてくれるのが特徴です。洋ナシのようなフルーティーな味わいやスパイシーさが楽しめる味わいもおすすめできます。
- バーボン樽は、アメリカのバーボンを熟成させた樽を利用します。特長としては、バーボン独特の甘みと複雑は香りが特長になります。下の画像をよく見てみると「HEAVEN HILL」「BOURBON」と刻印されています。これはバーボンメーカーのヘブンヒルが使った樽だとわかります。
瓶詰め
最後の工程として瓶詰めを行います。基本的に瓶にウイスキーを詰めていきますが、樽や缶にも詰めていきます。
いずれにしても瓶詰めを行う前に、必要に応じて加水と低温ろ過を行うのがポイントです。
加水はウイスキーに水を足してアルコール濃度を下げる方法です。アルコール度数が高いウイスキーは、そのままでは刺激が強いので加水をして度数を調整していきます。
また、加水を行っていないウイスキーはカスク・ストレングスと呼び、アルコール度数が高いウイスキーが楽しめます。
低温ろ過とは澱を防ぐために行う方法です。澱とはウイスキー内に小さな白、または茶色いもののことで、ウイスキーの品質を左右すると言われています。ただ、低温ろ過をすると香味成分までもろ過してしまうので注意が必要です。
低温ろ過されているウイスキーはチルフィルターと呼ばれ、低温ろ過されていないウイスキーはノンチルフィルターと呼ばれています。
必要に応じて以上の工程が終わり次第、瓶、樽、缶にウイスキーを詰めて完成です。
まとめ
ウイスキーの作り方一つで風味や味わいなどを左右するため、それぞれの製造工程で気を使うことが多いでしょう。
特に熟成させるための樽の選定や調合方法、後熟に使用する樽の選定など、作り方を変えただけで風味や味わいがガラリと変わるので、どんなウイスキーを作りたいのかによって製造工程が左右されます。
ウイスキーをもっと楽しみたい人は、興味があるウイスキーがどんな方法で作られているのか調べてみるといいかもしれませんね。